【今回のワイナリーは…】
クリスチャン ビネール / Christian Binner
【生産者は、こちらの方…】
クリスチャン ビネール / Christian Binner
くもり
0.2℃
92%
1.41m/SW
06:49
15:45
はじめての体験は、クリスチャン ビネールのリースリングだった。
なぜだか、とても自然に涙した。そのときのことは今も鮮明に覚えている。
黄金の液体が私の魂に触れた瞬間、脳が言葉を発するよりも早く、からだが反応した。
まるで、秘密の花園に迷い込み、そこここに咲きほこる蠱惑的な薔薇の美しさと芳しさに得も言われぬ至福の時間が訪れる、そんな印象だった。
その出会いが、その後の人生を変えるほどの、価値を秘めていたとは、そのときは思いもしなかった。
あの日から十数年…私の魂を震わせた造り手を訪ね、アルザスを旅する。
ワイン街道の中心地コルマールから北東に、ブドウ畑の続く豊かな丘陵地を20分ほど駆け抜ける。ワイン造りの農家の並ぶアンマーシュヴィアの小さな集落に、ビネールの蔵はあった。
薄緑にそまるブドウ畑を望むように、新しいカーブが建てられている。アルザスの光と風が心地よく通り抜けるような、自然との調和を配慮した曲線的なフォルムが美しい。
この旅の目的の一つは、ビネールの仕事場である、新カーブを訪れること。それは、私にとって特別な意味を持つ。
ワインは、単に酔いという快楽をもたらすだけでなく、その液体は言葉のない小説のごとく、飲み手の意志や覚悟によって、見える、広がる世界が変わる。
そう難しく捉える必要はないけれど、その物語を、その世界を伝えるのが私の役目だと思っている。
この記事を書いた人は…
AYUMI IKEDA|池田 あゆ美
自然派ワイン専門店『ピクール』店主。映画業界、音楽業界、出版業界、IT業界…その時代時代で色濃く表現されるエンターテイメントが好きで、時代のニーズを捉え、それら一つ一つを私は職業としてきました。当時、男性社会と言ってもいいほどの厳しい業界をがむしゃらに走ってきたせいか、身体はボロボロ…。そんなときに訪れた地中海で「食卓」から生まれる人生の楽しさや豊かさに感銘を受け、今のナチュラルワインの仕事へと導かれていきました。ワインだけでなく、食、旅、音楽、映画など、一見関係ないジャンルの感性も大切にして、ワインを選ぶようにしています。ワイン通信販売、業務用卸売、ワインコンサル、セミナーなど、様々なニーズに丁寧にお応えします。