【今回のワイナリーは…】
トッレ アッレ トルフェ / Torre alle Tolfe
【生産者は、こちらの方…】
ジャコモ マストレッタ / Giacomo Mastretta
雨
13.8℃
92%
0.24m/NE
06:23
15:41
イタリアの永遠の都ローマには、コロッセオやフォロ ロマーノをはじめとする古代ローマ遺跡や中世の教会が現在もいたるところに残されていて、街自体がまるで大きな歴史博物館のよう。
ローマ帝国の息吹が聞こえてきそうなその姿に、旅人である私は興奮と感動を覚えます。
地中海世界を統一したローマ帝国。
その広大な領土のどこに住んでいてもローマと同じような快適な暮らしができるようにと、水道、道路などの生活インフラ整備に力を注いだといいます。
あるとき、塩野七生さんのエッセイ「皇帝いぬまにネズミはびこる」を読んで、ローマの下水道は古代ローマ帝国の崩壊以来、一度も掃除されていなかった…ということに驚愕したのですが、一方で補修やメンテナンスも充分にせずに、現在まで使い続けられている技術力の高さに、ただただ感嘆もしたのでした。
ローマから太陽の高速道路を北上すること150キロ。
高速道路を降りて西へ車を走らせると、いくえにも連なるなだらかな緑の丘陵のトスカーナが広がります。
この一帯は、世界中で広く愛される赤ワイン「キャンティ」の産地で、その地名は北はフィレンツェから南はシエナまでのトスカーナ全体の10%に相当する広大な地域を指しています。
これは20世紀初頭、経済を優先して、爆発的に境界線を広げた原産地呼称によるもので、その拡大によって「キャンティ」と冠したワインは大量に流通するようになりました。
その品質はまさに玉石混交。
結果「安かろう悪かろう」なキャンティまで出回るようになってしまったのです。
これは「ブランド崩壊の危機」と警鐘を鳴らしたのは、伝統的にキャンティを産出していた優良生産者たちでした。
有志が立ち上がり品質保護協会を設立したことで「キャンティ」は目覚ましい進化をとげることになります。
いかにもイタリアらしい歴史です。
そんな「キャンティ」に、私の心を震わせたワイン「ラ ポルタ ディ ヴェルティーネ」がありました。
醸造家ジャコモ マストレッタが造るワインは、サンジョヴェーゼらしく優美で、透明感のある果実味と綺麗なタンニンのバランスが素晴らしく、しなやかなスタイルでした。
しかし、オーナーの経営破綻でやむなく廃業、蔵の歴史を閉じたのでした。
それからは、醸造家ジャコモの新たな活躍の場と感動の味わいの便りを待つ日々でした。
そして、その日がついに訪れたのです。
古都シエナ近郊のトルフェ村にある「ラ トッレ アッレ トルフェ」その農園やワイン造りの哲学に共感し、ジャコモが醸造を引き受けることになったのです。
この記事を書いた人は…
AYUMI IKEDA|池田 あゆ美
自然派ワイン専門店『ピクール』店主。映画業界、音楽業界、出版業界、IT業界…その時代時代で色濃く表現されるエンターテイメントが好きで、時代のニーズを捉え、それら一つ一つを私は職業としてきました。当時、男性社会と言ってもいいほどの厳しい業界をがむしゃらに走ってきたせいか、身体はボロボロ…。そんなときに訪れた地中海で「食卓」から生まれる人生の楽しさや豊かさに感銘を受け、今のナチュラルワインの仕事へと導かれていきました。ワインだけでなく、食、旅、音楽、映画など、一見関係ないジャンルの感性も大切にして、ワインを選ぶようにしています。ワイン通信販売、業務用卸売、ワインコンサル、セミナーなど、様々なニーズに丁寧にお応えします。