口中調味とマリアージュ

ピクールからのお便り「ワイン日和」 - IMAGE COPYRIGHT © PCOEUR ALL RIGHTS RESERVED.

宴会帰りの父の赤い顔、母に威張り散らす父の高声、朝の食卓で父が広げた新聞…向田邦子さんのエッセイ『父の詫び状』を読みながら、幼い頃、うちにもあった家族団らんの風景を思い出した。

食卓を囲んで、1日の出来ごとを語らいながら、家族全員でご飯を食べる。

うちは祖父母も同居する三世代家族。

厳しい祖父が食卓の上座に鎮座して、目を光らせていた。

姉弟で喧嘩をしたあとは、祖父の雷が落ちないかとビクビクしながら沈黙の夕飯を食べる。

「いただきます。ご馳走さまの食べものへの感謝と挨拶をきちんということ。口を開けて食べない」など、食事の作法を厳しく躾けられたのも家族の食卓。

そして、おかずばかり食べていると「ご飯を食べて、おかずを食べて、汁物を飲む。

この順番でゆっくり噛んで食べなさい」と、母から口うるさく注意された。

厳しくも温かい家族の団らん。

今思えば、向田邦子の大家族ホームドラマそのものが、あちこちの茶の間で繰り広げられていた。

この記事を書いた人は…

AYUMI IKEDA池田 あゆ美

自然派ワイン専門店『ピクール』店主。映画業界、音楽業界、出版業界、IT業界…その時代時代で色濃く表現されるエンターテイメントが好きで、時代のニーズを捉え、それら一つ一つを私は職業としてきました。当時、男性社会と言ってもいいほどの厳しい業界をがむしゃらに走ってきたせいか、身体はボロボロ…。そんなときに訪れた地中海で「食卓」から生まれる人生の楽しさや豊かさに感銘を受け、今のナチュラルワインの仕事へと導かれていきました。ワインだけでなく、食、旅、音楽、映画など、一見関係ないジャンルの感性も大切にして、ワインを選ぶようにしています。ワイン通信販売、業務用卸売、ワインコンサル、セミナーなど、様々なニーズに丁寧にお応えします。