母なる大地がワインを蘇らせる – フェザンツ ティアーズ / ジョン ワーデマン –

ピクールからのお便り「ワイン日和」 - IMAGE COPYRIGHT © PCOEUR ALL RIGHTS RESERVED.

【今回のワイナリーは…】
フェザンツ ティアーズ / Pheasant’s Tears

【生産者は、こちらの方…】
ジョン ワーデマン / John Wurdeman

この地域「Sighnaghi」の天気現地時間 5/18 12:39 計測
  • 晴天
    晴れ
  • 気温
    14.8℃
  • 湿度
    52%
  • 風速/風向
    2.69m/NE
  • 日出時刻
    01:34
  • 日入時刻
    16:11

琥珀…結露で窓ガラスがすっかり曇っている、冬の温かい部屋で、どこか温かさを感じさせる、天然石を眺めていた。

琥珀、アンバーとも呼ばれる、その天然石は、太古の樹液が固まったものだという。

アンバーに輝くタイムカプセルのような石は、樹液とともに昆虫や空気、植物までも一緒にとじこめて、光り輝く。

だからか、スノードームを覗いている気分にさせた。

人類が生まれるはるか昔の太古の森をとじこめたその石を指で優しく撫でてみる。

すると、悠久の時間と空間が、指のなかからこぼれ落ちていく、そんなふうに感じられた。

アンバーの色というのは、切なく、どこか優しい。

じつはワインにも、アンバーと呼ばれるワインが存在する。

絶世の美女クレオパトラが、ときに1人ワインを傾けながら涙したと伝えられているワイン、その正体こそ、コーカサス地方のジョージア(旧国名 グルジア)の琥珀色の液体だった。

ワイン産地としては、マイナーだから、ご存知ない方もまだまだ多いと思う。

ヨーグルトの産地、もしくは相撲ファンなら、栃ノ心関の出身地として知っているかもしれない小国。

にも関わらず、日本の「和食」が2013年にユネスコ無形文化遺産として登録されたのと同時に「ジョージア ワイン」も認定された。

8000年の歴史をもつ世界最古のワイン文化の発祥の地だからだ。

世界遺産に登録されたことで、その世界最古の古めかしいワインが、今、世界から注目を集めている。

ジョージアで古くから続く伝統的な製法がどのようなものか、少し掘り下げてみたい。

ヨーロッパの一般的な製法とは一線を画す独特な手法は「クヴェヴリ」と呼ばれる、素焼きの大きな甕を用いてワインを醸す。

クヴェヴリは、大きなものなら5000リットル入るものもある。

収穫して軽く潰したブドウをクヴェヴリに入れて発酵させる。

その大きな甕をマラニと呼ばれる石造りのワイン蔵の地中に埋めて、一定の温度で再発酵させ熟成させる。

ブドウの果汁と搾りかすを一緒にして発酵熟成する、その時間は、オレンジワインの醸しの時間よりもさらに長い。

母胎を思わせる卵型のクヴェヴリは、首まで地中に埋める。

だから、発酵熟成をしている間は外から手出しもコントロールもできない。

言いかたを変えれば、一切がクヴェヴリまかせの醸造法ということになる。

しかも、ステンレスのタンクなどと違い、衛生管理も至難の技なのだ。

この記事を書いた人は…

AYUMI IKEDA池田 あゆ美

自然派ワイン専門店『ピクール』店主。映画業界、音楽業界、出版業界、IT業界…その時代時代で色濃く表現されるエンターテイメントが好きで、時代のニーズを捉え、それら一つ一つを私は職業としてきました。当時、男性社会と言ってもいいほどの厳しい業界をがむしゃらに走ってきたせいか、身体はボロボロ…。そんなときに訪れた地中海で「食卓」から生まれる人生の楽しさや豊かさに感銘を受け、今のナチュラルワインの仕事へと導かれていきました。ワインだけでなく、食、旅、音楽、映画など、一見関係ないジャンルの感性も大切にして、ワインを選ぶようにしています。ワイン通信販売、業務用卸売、ワインコンサル、セミナーなど、様々なニーズに丁寧にお応えします。