ビオディナミにひとつの答えはない – ドメーヌ ド ヴィルヌーヴ / スタニスラス ワリュット –

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【今回のワイナリーは…】
ドメーヌ ド ヴィルヌーヴ / Domaine de Villeneuve

【生産者は、こちらの方…】
スタニスラス ワリュット / Stanislas Wallut

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紅葉も散り始めて、だんだん冬の足音が近づいてくる。

空気の澄んだ季節は、月が美しい。

まばゆい光を放つ神々しいまでの月。

そんな月の輝く夜にこそ、楽しみたいワインがある。

月の満ち欠けにもとづいてブドウを栽培する「ビオディナミ」そんなスピリチュアルな農法を取り入れた「自然派ワイン」は、農作物の生産が減農薬や有機農法へとシフトするなかで、少しづつ身近な存在になってきた。

「100歳を超えるブドウ樹が今にも息絶えそうな状態だったとき、ロワール地方のビオディナミの主導者 フランソワ ブージェの指導のもと、ビオディナミ調剤のイラクサを使ったんだ。

すると、年老いたブドウ樹は息を吹き返し、枝が元気に伸び始めた。

その驚きの結果と農法のアプローチに惹かれて、ルネッサンス デ ペラシオンに加入したんだ。

その団体は、造り手としての先人の知恵も豊富だったから、ブドウ畑で働くことが好きになった」そう話したのは、『ドメーヌ ド ヴィルヌーヴ』のスタニスラス ワリュットだった。

先日、ニコラ ジョリーの率いる自然派ワインの生産者団体『ルネッサンス デ ペラシオン』の試飲会がフランス大使館で開催された。

今回来日したのは、なんと60生産者。

そのなかに『ドメーヌ ド ヴィルヌーヴ』のスタニスラス ワリュットや『ドメーヌ マルク テンペ』、『ラ フェルム デ ラ サンソニエール』のマルク アンジェリなど、私のよく知る造り手の名前を見つけた。

何を隠そう、初めて「ビオディナミ農法」と聞いたとき、私の印象はずばり「怪しい」だった。

牛の角に牛糞を詰めて土中で寝かしたものや水晶を砕いて粉状にしたものを畑で使ったり、月の満ち欠けが影響すると聞き、オカルト的だと感じた。

そんなとき、バイオダイナミック農法の教祖であり提唱者 ニコラ ジョリーの講演会が日本でも開催され、ここぞとばかりに参加した。

ルドルフ シュタイナーの『農業講座』が基礎となった農法の思想のこと、月や天体の動きが植物に与える作用、そしてブドウの根の発育促進の効果まで、とても充実した内容だったのだが、とても小難しかった。

けれど、あとの試飲会でニコラ ジョリーに一対一で話しを聞いてみると、「科学的なものを使って、バランスを崩してしまった自然のバランスを取り戻すことだよ。

そして、その場所で育った植物や動物の力を借りて、バランスを高めてあげる。

それだけだよ」と教えてくれた。

それで、やっと「ビオディナミ」というのは、農作物や動物たちの成長や育成に自然界の力を活かすための知恵の集積なんだと、シンプルに思えるようになった。

現代の私たちが忘れてしまっている自然の法則をブドウ栽培やワイン造りに活かすことなんだと。

それは「自然派ワイン」がブームとなる10年以上前のことだ。

この記事を書いた人は…

AYUMI IKEDA池田 あゆ美

自然派ワイン専門店『ピクール』店主。映画業界、音楽業界、出版業界、IT業界…その時代時代で色濃く表現されるエンターテイメントが好きで、時代のニーズを捉え、それら一つ一つを私は職業としてきました。当時、男性社会と言ってもいいほどの厳しい業界をがむしゃらに走ってきたせいか、身体はボロボロ…。そんなときに訪れた地中海で「食卓」から生まれる人生の楽しさや豊かさに感銘を受け、今のナチュラルワインの仕事へと導かれていきました。ワインだけでなく、食、旅、音楽、映画など、一見関係ないジャンルの感性も大切にして、ワインを選ぶようにしています。ワイン通信販売、業務用卸売、ワインコンサル、セミナーなど、様々なニーズに丁寧にお応えします。