「う〜ん! おいしい」は、食のレポートやエッセイでは、限りなく繰り返されてきた言葉だろう。
私の人生においても、この言葉は、最高の感嘆であり、たぶん何度となくいい、何度も書いてきた言葉である。
私の場合、心も奪われる料理に出会ったときには、絶句、瞳を閉じて口角を上げてほほえむ。
いや、間違いなく顔がほころびニヤけている。
そんなときが、最高においしい瞬間だったりする。
描写すると、お恥ずかしいこと極まりないけれど。
「おいしい」というのは、食の欲求=動物にも人間にも共通する「空腹を満たす」という、一つの欲望の先にある、人間らしい感情=楽しみやよろこびの表現である。
自らの感嘆、料理を提供してくれた人に対する意思の伝達、一緒に食べている人とのコミュニケーション。
感謝や共感、評価、発見などを内在した、便利な言葉なのである。
一方で、その人の生まれた環境や現在までの経験、そのうえでの食の美意識、表現力までをあらわにしてしまう(と考えると、恐ろしい)「おいしい」を、難しく設定しておいてなんだが、「おいしい」は、とにかく楽しんだもの勝ちだ。
では、食事をおいしくするワインって、何だろう?
この記事を書いた人は…
AYUMI IKEDA|池田 あゆ美
自然派ワイン専門店『ピクール』店主。映画業界、音楽業界、出版業界、IT業界…その時代時代で色濃く表現されるエンターテイメントが好きで、時代のニーズを捉え、それら一つ一つを私は職業としてきました。当時、男性社会と言ってもいいほどの厳しい業界をがむしゃらに走ってきたせいか、身体はボロボロ…。そんなときに訪れた地中海で「食卓」から生まれる人生の楽しさや豊かさに感銘を受け、今のナチュラルワインの仕事へと導かれていきました。ワインだけでなく、食、旅、音楽、映画など、一見関係ないジャンルの感性も大切にして、ワインを選ぶようにしています。ワイン通信販売、業務用卸売、ワインコンサル、セミナーなど、様々なニーズに丁寧にお応えします。