【今回のワイナリーは…】
レ ドゥー テール / Les Deux Terres
【生産者は、こちらの方…】
マニュエル クナン & ヴァンサン ファルジェ / Manuel Cunin & Vincent Fargier
雨
4.2℃
88%
2.88m/S
06:46
16:08
萌黄色が若葉色へ、そしてさらに緑深まる、5月。
冬から春へ、そして初夏へと移ろい始めた頃、体も心も脳も衣替えしなきゃと、やっと活動的になる。
自分のことながら、まるで冬眠している動物と同じだと呆れてしまうのだけど。
生きものたちは、寒い冬を乗り切るために、じっとエネルギーを蓄え、寒さに負けないように熱を貯めて過ごす。
例えば、熊。
「お腹すいた~!」と空腹に目覚めて最初に食べるのは、「山菜」この春の恵みは、雪の中から発芽する生命力の塊でもあり、あのほろ苦い味わいこそ、溜まった老廃物を排出し、冬から春へと体をリセットしてくれる強力なサポーターになる。
まばゆいばかりの緑のパワーを感じると、眠っていたワインもそろそろお目覚めの頃かなと、試しに何を開けようかとルンルン気分になる。
「ワインは天、地、人によって形成されている」とよく語られる。
気候(天)、土壌と地形(地)、造り手(人)、そして原料であるブドウ品種という4つの要素がワインの味わいを決める。
さらに、私がセレクトする自然派ワインやナチュラル ワインといわれるジャンルのワインは、ブドウ畑やセラーでの化学的、人為的な介入は必要最小限であるべきだと考え、化学肥料や農薬、除草剤を使用せず、自然の力に畏敬の念を抱きながら農業をし、ブドウを醸す。
それは、雑草や野花が生い茂り、ミミズや微生物、小動物が活動する生きた生態系が保たれる畑で、造り手たちはみずからの手で除草をし、耕作に励み、収穫も手摘みで行う。
そんな環境で育ったブドウは地下深くに根を張り、地中のミネラル成分や栄養分を果実へと結実させる。
畑には、天然の酵母も生息しているから、ブドウの果実の表皮には天然の酵母が付着する。
そのおかげで、セラーでは、基本的に畑由来の天然酵母の働きによって、自発的な発酵が促され、ワインが醸される。
だから、一般的なワイン造りでは必要な、人工酵母は使用しない。
そして、酸化を防止するためだからといって、天然酵母を殺してしまうようなSO2(酸化防止剤)の添加も醸造の過程ではしない。
そのかわり、酸化や腐敗に強い、健全で生き生きとしたブドウを育てることに全力を尽くす。
自然なワインの造り手なら、誰もが口を揃えていうことだけど「健全で綺麗な状態のブドウを収穫する。
そして、きっちりと選果をすることが、何よりも重要だよ」そう語ったのは、『ドメーヌ レ ドゥー テール』のヴァンサンだった。
南仏、太陽まばゆいアルデッシュ地方の北部『レ ドゥーテール=二つの土地』という名前をもつ、このドメーヌの取り組みは、面白い。
この記事を書いた人は…
AYUMI IKEDA|池田 あゆ美
自然派ワイン専門店『ピクール』店主。映画業界、音楽業界、出版業界、IT業界…その時代時代で色濃く表現されるエンターテイメントが好きで、時代のニーズを捉え、それら一つ一つを私は職業としてきました。当時、男性社会と言ってもいいほどの厳しい業界をがむしゃらに走ってきたせいか、身体はボロボロ…。そんなときに訪れた地中海で「食卓」から生まれる人生の楽しさや豊かさに感銘を受け、今のナチュラルワインの仕事へと導かれていきました。ワインだけでなく、食、旅、音楽、映画など、一見関係ないジャンルの感性も大切にして、ワインを選ぶようにしています。ワイン通信販売、業務用卸売、ワインコンサル、セミナーなど、様々なニーズに丁寧にお応えします。