魚とワイン、生臭さの原因 前編

ピクールからのお便り「ワイン日和」 - IMAGE COPYRIGHT © PCOEUR ALL RIGHTS RESERVED.

感性は、人の数だけ存在する。

夕日が海に描く光の道を見て涙する人もいるだろうし、夢に向かって、ひたむきに努力する人の姿を美しいと思う人もいるだろう。

仏教には「六根 ろっこん」という言葉があって、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感に「知=心」を加えたものの総称…と、その昔教えてもらった。

その知こそが感性。

で、その感じるチカラの先にあるものが、表現なんだろう。

ワインの場合は、ワインを飲んだあとに発する、誰もが簡単に意図せず発する言葉は「感想」、さらにその先、完璧に伝え切ることが叶わない心のうちを、言葉を駆使してどうにか伝えようとする瞬間こそ「表現」だろう。

相手あればこその愛おしい言葉。

だから、そんなワインの表現も人の数だけ存在していい。

私には、忘れられない瞬間がある。

ワインに興味をもつきっかけとなった日のことだ。

いつもの料理がワインの力でさらに美味しくなった瞬間…私は料理とワインの関係に開眼してしまった。

それから、いつも頭を巡るのは「この料理に合う最高のワインは、何?」ということ。

そして、定番の組み合わせや思いつきの奇抜なアイデアを試すなかで「幸運な巡り合わせばかりではない」という、とっても残念な失敗も重ねた。

その悲しい経験の一つが、魚介の生臭さを際立たせる不快な組み合わせだ。

今回は、魚とワインのマリアージュの第一回目。

この記事を書いた人は…

AYUMI IKEDA池田 あゆ美

自然派ワイン専門店『ピクール』店主。映画業界、音楽業界、出版業界、IT業界…その時代時代で色濃く表現されるエンターテイメントが好きで、時代のニーズを捉え、それら一つ一つを私は職業としてきました。当時、男性社会と言ってもいいほどの厳しい業界をがむしゃらに走ってきたせいか、身体はボロボロ…。そんなときに訪れた地中海で「食卓」から生まれる人生の楽しさや豊かさに感銘を受け、今のナチュラルワインの仕事へと導かれていきました。ワインだけでなく、食、旅、音楽、映画など、一見関係ないジャンルの感性も大切にして、ワインを選ぶようにしています。ワイン通信販売、業務用卸売、ワインコンサル、セミナーなど、様々なニーズに丁寧にお応えします。