
メルローは、その名前の語源が「ツグミ(Merle)」に由来すると言われているように、ブドウが熟すころ畑に現れるこの鳥の姿と結びつけられるほど、完熟のタイミングに敏感で、果実の魅力にあふれています。
しかし、そうした詩的な語源の奥には、ブドウとしての奥深い遺伝的背景もあります。近年のDNA解析により、メルローはカベルネ・フランとマグドレーヌ・ノワール・デ・シャラントの交配によって生まれたことが明らかになっています。
このカベルネ・フランはカベルネ・ソーヴィニョンの親でもあり、ボルドーの主要黒ブドウがいかに密接に繋がっているかがわかります。
ボルドーの右岸地方、特にサンテミリオンやポムロールにおいて、メルローは古くから主力品種として重宝されてきました。果粒は比較的大きく、皮が薄く、タンニンが柔らかいため、熟成を待たずとも滑らかで親しみやすい味わいになります。さらに早熟であることから、雨の多い収穫期を避けて安定した収量を確保できる利点もあり、伝統的に晩熟型のカベルネ・ソーヴィニョンを支える補助品種として重用されてきました。
とくにメドック地区では、年ごとの天候や作柄に応じてメルローの比率を調整することで、ワインのバランスをとる技術が磨かれてきたのです。とはいえ、かつてのメルローはあくまで「名脇役」としての扱いが主流で、単一品種としての評価は決して高くはありませんでした。しかし、そんな位置づけを大きく変えたのが、リブルネ地区を拠点に活動した醸造家ミッシェル・ロランの存在です。

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ITARU TESHIMA|手島 格
自然派ワイン専門店『ピクール』店主2号。現在、ワインコンサル、ワイン販売、飲食店へのソムリエ派遣など、ワインに関わる多くのことに対応させていただいております。世の人が少しでも楽しく幸せになれるように「楽しませて、自分も楽しんで」をモットーにしています。ワイン業界以前は、WEBゲーム業界において、デザイン、システム開発、企画などの現場業務からマネジメントまでと、様々な経験を積み重ねてきました。寝食を犠牲にした分、それが礎となり、今でも役に立っているような気がします。仕事も趣味も多岐に渡りすぎたのか、独立すると、なんでも屋に…笑。今の趣味はダンスから柔術へ。WEBブランディング、ロゴ制作、ホームページ、写真撮影、社内システム整備など、ワイン以外でのご相談もどうぞ。 tessy.work